朝の1時間

多くの人がそうであるように、僕はラッシュ時の混雑が苦手だ。ラッシュでなくても混雑は苦手なのだが、それはともかくとして、そのピークを避けるために1時間早く会社に着くようにしている。
といっても、仕事も1時間前からしているわけではなくて、会社が入居しているビル内の大きな吹き抜けのあるホールみたいなところで新聞を読んだりCDを聴いたりして過ごしている。
今のようにラッシュをはずして電車に乗るようになったのはここ2,3カ月の話だ。実は今年の初めに会社の引っ越しがあった。距離はほとんど変わらないけれど、乗る路線が変わりラッシュ時の混雑がひどくなった。そのラッシュを避けるため、早めの電車に乗るようになったというわけ。

空いた1時間もあるといろんなことができる。新聞の細かいところまで読みふけるもよし、コンビニで雑誌を買ってきて最近の流行をチェックするもよし、制作中FLASHの構想を練るのにも適している。いずれにしても、朝のゆったりとした1時間は貴重だ。
ここ数ヶ月、ずっと本を読んでいなかった。そうだ、読書をしようということで最近は読書をしている。久々の読書。最初の数行を読んだだけで、まるで砂漠に砂が染み込むように言葉が身体に染み込んでくる。ここで初めて、ああそうだ、僕は本を読みたかったんだと気付く。ずっと身体が空虚な物置のように感じていたのは、本を読んでいなかったからなのか。そんなふうに思わせるのは作品の力なのか。今読んでいるのは、村上春樹の「スプートニクの恋人」。おいしい食事を味わうときのように、ゆっくりと読み進めるつもり。