「おいしいコーヒーのいれ方」完結

村山由佳著「ありふれた祈り」読了。

おいしいコーヒーのいれ方」シリーズの最終巻である本作が2020年6月に刊行された。20年以上かけて、19冊に渡って大切に綴られた長編恋愛小説で、長きに渡って追い続けてきた登場人物たちの長い長い物語がようやくひとつの結末を迎え、完結までひとりの読者としてともに時を過ごすことができたことに安堵している。

ひとつ前の「地図のない旅」から最終巻が出るまでに7年。その間、著者が全く毛色の異なる作品をいくつか出していることもあり、もうこのシリーズの新刊はお目にかかれないのかも知れないと半ばあきらめつつ、それでも夏が近くなってくるとそわそわしてしまうのがここ数年続いていた。このシリーズの文庫版は、いつも6月に出るのだ。

ヒロインのかれんは恥ずかしいくらいブレがなく一途だし、主人公の勝利ことショーリはどうしようもないくらい誠実で青臭い。どの登場人物も愛すべきアイデンティティを持っており、最初はライトノベルのような感覚で読み始めたのに、気付いたらハマっていて、どの巻を読んでも泣けてしまう。

小説の中では6年ほどしか経っていないので、自分が重ねた年月に比べて登場人物がさほど歳をとっていないことに今さら驚く。完結してよかった、よかったよ。