『村上朝日堂 はいほー!』

村上春樹の少し古いエッセー『村上朝日堂 はいほー!』を読んだ。
このシリーズは面白い。読んでいて楽しくなってくる。具体的な箇所についてはここでは書かないけれど、どんなふうに面白いかというと、まず書かれていることにいちいち共感できる。なんだか、僕が自分で書いた文章なんじゃないかという気になってくる。で、もっと読んでいると、自分も彼と同じような文章が書けるような気がしてくる。さらに読んでいると、だんだん自分が村上春樹なんじゃないかという錯覚に陥るようになってくる。
もちろんそんなことはあり得ない話で、こういうエッセーは誰にでも書けそうでいて、絶対にその文章は真似できない。いや、真似はできたとしても、他の人間が書いた文章は、決して村上春樹の文章にはなりえない。
全身全霊を込めて長編小説を書く、その合間に気分転換のために肩の力を抜いて書いてみました、このエッセーはそんな感じだ。リラックスした力の抜け具合が伝わってきて、それが心地よい。
自分がいいなあと思って読んでいる作家の考え方が、部分的にではあっても自分と似ていることを感じられるのはうれしい。といっても、当然ながら全部が全部似ているわけではなくて、もしかしたら僕は自分に都合がいい部分だけを「似ている」と言っているのかも知れない。まあ、文章に限らず、好きという気持ちは得てしてそういうものだ。
スコット・フィッツジェラルドもいつか読んでみなくちゃなあと思う。

村上春樹とは直接関係ないけれど、忘れないうちに書いておく読む本リスト>
乙一『ZOO』
東野圭吾白夜行
大崎善生『パイロットフィッシュ』