2005年を振り返る

年末なのでこの1年を振り返ってみることにします。
僕にとって今年最大の出来事は、the CRAZY ANGEL COMPANY(CA)と出会ったこと。2005年3月5日、僕はこの日を忘れない。人の生き方まで変えてしまう感動的な集団のライブ「ROOTS」を観た。
一般的に、どんなに感動的な舞台を観たとしても、自分も同じ舞台に立ちたいと思うかどうかは全く別の話だ。それは最近自分が感動した舞台や映画などを例に考えれば簡単に分かる。キャラメルボックスの公演を観て感動したときに、自分はその劇団に入ろうと考えたか?映画を観て感動したときに、その映画監督と一緒に制作活動をしようと考えたか?「素晴らしい」「もう一度観たい」と感じたとしても、そう簡単に「自分も一緒にやろう」とは思わないのが普通だ。
なぜ僕はCAに入りたいと思ったのだろう。入団以来、そのことをずっと考えてきた。
思うに、それまではっきりと自覚していなかっただけで、僕はもともとこういうことをやりたいという気持ちが潜在的にあったのではないか。自分がやりたかったことを目の前で見せつけられて、眠っていた何かが一気に爆発した。「ROOTS」を観たとき、僕は心からの感動に震えると同時に、無性に腹が立った。なんだよ、こんな面白いことやってるならおれにももっと早く教えてくれよと。なんで自分に内緒でこんな楽しそうなことやってるんだよと。
 
閑話休題。
僕はかつて、インターネットの中で暮らしていた。ネットの中で寝起きし、同じくネット上で暮らす人に見せるためのコンテンツを作り、賞賛を得ることに価値を見出していた。いいとか悪いとかではなく、そうして暮らしていた。常に自分を認めてもらいたいと思っていた。誰かに褒めてほしかった。すごいと言われたかった。インターネットは、面倒な人とのやり取りを介さずに自分の存在を手っ取り早くアピールする手段だった。本当は人に触れたかったのに、自分から積極的に人と関わろうとはしなかった。面白いコンテンツを作り、人が自然に自分の方を向いてくれたらいいと思っていた。
その結果、ある方面で少しばかり有名にもなり、自分を誉めてくれる人も出てきた。自分が作ったものを見て感動したと言ってくれる人もいた。そのこと自体はうれしかった。でも、孤独感は埋まらなかった。
その世界の中でやりたいことがなくなり、ネット上での生活に飽きても、惰性でその世界にとどまっていた。新しい世界を拒絶していた。だって、知らない世界に飛び込むのは怖かったから。人に拒絶されるのが怖かったから。せっかくネット世界で築いてきたものがあるのに、新たな世界で自分を築いていくことは面倒だし大変だから。自分の知る小さな世界で暮らすのが一番楽で簡単だったから。
もういろんなことに飽きていた。
どうしていいか分からないまま何かをあきらめてミニマムな生活を送っていた。
 
そんなときに出会ったのがCAライブ「ROOTS」。生身の人間が活動する生命の輝きを目の当たりにして、湧き上がる感動に戸惑った。自分はどうしてこんなにドキドキしているのか。僕はもう音楽することを終わりにしたはずだったのに。楽器なんてもう何年も触っていなかったのに。
思った。自分も向こう側の人間になりたい。感動させてもらう側ではなくて、感動させる側の人間になりたい。目の前にある高く厚い壁。自分自身が作り上げた自分の心を覆うもの。内から湧き出る熱いエネルギーは、その壁をいとも簡単に溶かした。
翌日、真冬の寒さの中、僕はトランペットを持って近所の原っぱに立っていた。
 
それから2週間後のワークショップ当日、僕はCAへの入団希望の意思を担当者に伝えた。それまで自ら新しい世界に踏み込むことを拒絶していた僕が、知らない人たちと一緒に活動したいと口にできた。このことが革命。この1年で最も大きな出来事。CAとの出会いが僕の生き方を変えた。これからもやります。
次の本公演「SPIRITS」は2006年5月27日(土)・28日(日)。もう動き出しています。
 
2005年の更新はこれで終了です。皆さま、よいお年をお迎え下さい。