夜の電車内

残業で遅くなった帰りの電車内。立っている人のまばらな車両。7人がけのシート。
疲れて眠りこけている中年男性の持っていた週刊誌が、ばさっと床に落ちた。彼が目を覚ます気配はない。周りの人たちも特にそれを拾う気配はない。と、それはいいのだけれど、床に落ちた週刊誌がたまたま開いたページは、ちょっとエッチな写真の掲載されているコーナーだった。それまでの車内に漂っていた穏やかで気怠い静けさは、なんとなく気まずい沈黙に変わった。
次の駅。男性の隣りに座っていた中年女性が降りていった。ちょうど降りるべき駅に到着しただけのことだったのかも知れないけれど。